こんなとき、先生ならどうしますか?
■ 症例概要
40代・女性
直腸癌(RS-Rb)、50mm、前壁
cT4b(子宮・膣)N0M0
婦人科診察では後膣壁への腫瘍露出は認めないものの、
後膣円蓋部中央から1~2cmの範囲で浸潤の可能性が考えられました。
治療方針として、ロボット支援直腸低位前方切除術+子宮合併切除が検討されていました。
QUESTION
先生なら、どのような治療方針を考えますか?
Q1. 肛門温存を目指しますか?
Q2. TaTMEを併用しますか?
Q3. 手術を先行しますか?それとも術前治療を行いますか?
少し考えてから、専門医の見解をご覧ください。
コンサルタントからの回答
POINT 1 肛門温存を目指すなら、どのような術式を考えるか?
コンサルタントからは、子宮・膣合併切除を行いながら
肛門温存を目指す場合、TaTMEは非常に有用との見解が示されました。
その理由として、
✓ Distal marginの確保
✓ 2チーム手術による手術時間の短縮
✓ 外科的マージンの確保
✓ 直腸切離部と膣切離部のコントロール
などが挙げられました。
また、直腸吻合部と膣切離断端をずらすことで、
直腸膣瘻の予防につなげるという具体的な手術戦略も示されています。
POINT 2 「切除可能」でも、すぐに手術するのか?
今回の症例で、もう一つ重要な論点となったのが術前治療です。
cT4bは局所再発リスクが高いことから、コンサルタント施設では、
他臓器合併切除を行う場合であってもCRTを実施しているとの考えが示されました。
一方で、TNTについては、EMVI陽性や側方リンパ節陽性などを適応としており、
CRM近接やcT4bのみであればCRTを行うという、具体的な施設方針も共有されました。
つまり、「切除できるかどうか」だけではなく、
「どのような順序・方法で治療すれば、より良い結果につながるか」
という視点から治療戦略を考えることが重要になります。
POINT 3 機能温存まで含めて考える
術前放射線治療を考える際には、治療効果だけでなく、
その後の排便機能への影響も気になるところです。
本症例では腫瘍が肛門から離れていることから、
放射線による術後排便障害の悪化については、それほど懸念しなくてもよいのではないか、との見解が示されました。
このように、
根治性/術式/治療の順序/機能温存
を一つずつ切り離して考えるのではなく、患者さんにとっての治療全体を見ながら判断していくことがポイントになります。
まとめ
この症例から見えてくること
今回の症例では、「切除できるかどうか」だけでなく、
✓ 根治性:十分な切除マージンを確保できるか
✓ 術式:肛門温存を目指す場合、どの術式が適しているか
✓ 治療の順序:手術先行か、術前治療を行うか
✓ 機能温存:治療後の排便機能までどう考えるか
といった複数の視点から治療方針を検討する必要がありました。
「切除できる/できない」の二択ではなく、
患者さんにとってどのような治療戦略が適しているかを総合的に考えることが重要になります。
こんなとき、先生ならどうしますか?
「切除はできそうだが、本当に手術先行でよいのか」
「肛門温存を目指すなら、どの術式が適切なのか」
「術前治療をどこまで行うべきか」
日常診療で生じるこうした迷いに対して、専門施設ではどこを見て、どのように治療戦略を組み立てるのか。
CONNECT-RCでは、症例ごとに専門医の視点を取り入れながら、治療方針を検討することができます。